jsai2011_個-10

ICTを利活用した「佐久穂げんでる農業」の試み

遠藤 隆也 

M-SAKUネットワークス,〒384-0613 長野県南佐久郡佐久穂町大字高野町1500-42

要旨

 「農民とともに」の健康管理活動で歴史ある長野県の佐久穂町で、クラウド・コンピューティング環境を利活用した、元気の出る農業の支援活動:「佐久穂げんでる農業」の試みを始めた。人々の活動(H)に参加しながら、それに関与する情報の生態(I)を観察し、コミュニティ活動が新たな社会的・拡張的発達サイクルに深化していくための環境場を、一緒に協調学習しながら総合的にデザインしていく、HI総合デザイン活動について述べる。

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キーワード

農業コミュニティ,活動,情報生態,クラウド・コンピューティング,総合デザイン

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1. はじめに:

 「農民とともに」の健康管理活動で歴史ある長野県の佐久穂町で、さまざまな地域活動のネットワーク支援(佐久総合病院・地域医療に関連した「メディカル佐久情報ネット(www.msakunet.info)」、佐久穂町の元気のでるネットワーク創りに関連した「佐久穂げんでるネット(www.sakuho.org)、北八ヶ岳・白駒池周辺の苔と森に関連した「北八ヶ岳苔の会(www.kitayatsu.net)」など)を行ってきた。この地の農業に関しては、2年前までは四季の農業風景変化を写真撮影する程度の係わりで、農家が農作物を生産し、私たちは生産された農作物を消費するという分業関係にあった。それに対して、消費者も農家の活動にお役にたてることはないか、ということで始めたHI総合デザイン(Human activityInformation ecologyGround Design)活動の概要について報告する。

2. HI総合デザイン活動とは:

HI総合デザイン活動とは、人々の現場の活動(Human activity)に参加しながら、それに関与する情報の生態(Information ecology)を観察・調査し、人々の活動が新たな社会的・拡張的発達サイクルに深化していくための環境場を一緒に総合的にデザインしていく活動をいう。

3. 農業活動とこの地の農業情報の生態:

この地における具体的な農業活動とそれに関連した情報を学ぶために、複数の農家の方々(稲作、花、果樹など)、関係する方々の様々な活動に参加・観察させて頂いた。その学びから得られた、この地の農業活動とその情報生態の地域歴史・文化的な構造を示すイメージ図を図1に示す。この地の地域歴史文化口承活動、近所の先輩農家の体験活動、JA指導員活動、専門部会活動、都会の出版活動、県の試験所等の周知活動、無線放送、メディア活動などから生み出される暗黙知と形式知からなる環境に囲まれ、本人自身の歴史的過去の体験活動、インターネット情報収集活動からなる暗黙知と形式知を利活用しながら、実際の本人のその場での農業活動では、農作業現場に埋め込まれた社会分散認知環境の中で、年間計画やビジョン・目標などを頭に描きながら、現場でのインタラクション・作業を行っている様子が観察された。

1 農業活動の情報生態:地域歴史・文化的な構造

4. 環境場のHI総合デザイン:

上述の農業活動の情報生態を考慮しつつ、クラウド・コンピューティング環境(Google AppsYouTubePicasamind42、農業情報ネットなど)を利活用した「佐久穂げんでる農業」のシステム構成・運用図を、図2に示す。
2 クラウド・コンピューティング環境を利活用した「佐久穂げんでる農業」のシステム構成・運用図

この中では、現場農作業や育苗管理説明情報の映像化・ディジタル化、映像の時間軸に沿った知識やコメントの付与(図3)、教科書的知識情報のマインドマップによる形式知表現などが、佐久穂げんでるネットの中で、総合的に表象されたマクロな認知インタフェース(遠藤 1995)で見られるようになっている。

3 映像の時間軸に沿った知識やコメントの付与

5. むすび:今後の展開に向けて

 これまでの、活動からの学びと新たな拡張的発達サイクルに向けてのイメージを図4に示す。これまでの農家は生産し、消費者は消費するとの分業から、消費者が農業活動のICTによる見える化、農産物の共創支援活動に参加することで、与え手、受け手の協業へと進み、それが新たな社会的・拡張的発達サイクルに向けての可能性につながる動きが見受けられるようになってきている。

4  活動からの学びと新たな拡張的発達サイクル

しかしながら、これまでの試みは、未だ情報の「見える化」と「共同利用」のレベルにとどまっている。人々の活動が、コミュニティ活動としても、新たな社会的・拡張的発達サイクルに深化していくためには、「コミュニティ支援」や「協調学習支援」の機能が必要になってくる。

 現在、図5に示す「シーン・ナレッジ」(東ら 2008)を利用して、「コミュニティ支援」、「協調学習支援」を行っていくシステムの共同実験、並びに「光iフレーム」の利用実験を始めている。(詳細は別途報告予定である。)

シーン・ナレッジ(東ら 2008)を利用した「コミュニティ支援」「協調学習」の試み

謝辞

 日頃、農業についてご教示・ご示唆頂いている井出貞良さん、小林守正さんご夫妻、高見澤良平さん、JA佐久浅間の原田さん・トルコギキョウ専門部会のみなさん、萩原紀行さんご夫妻、在賀耕平さんご夫妻、八千穂有機農業研究会のみなさん、中辻佳和シェフ、佐久総合病院健康管理部の前島文夫さん、国立科学博物館植物研究部の樋口正信さん、サカタのタネの山田祐介さん、佐久穂町産業振興課の相馬信治氏、佐々木勝氏、古海勝氏、アンテナ佐久穂の力武文雄氏、町の若者の「いいずら研究会」のみなさん、そして情報通信技術についてご教示・ご支援頂いているNTTサイバーソリューション研究所の加藤洋一氏、小島明氏、NTT長野支店の立花研司氏、窪田和樹氏、桜井孝典氏、青木幸雄氏に深く感謝致します。

引用文献

遠藤隆也(1995):「リプリゼンテーションとインタフェース問題の基底: わかる認知科学から、わかりあえるマクロな認知工学に向けて」、認知科学Vol.2No.1.

東正造、寺中晶郁、嶌田聡、小島明(2008):「映像中のナレッジ発見・共有を想定したシステムの開発」、電子情報通信学会、信学技法 ME2008-156, 2008-09-26

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Takaya Endo,
2011/05/10 15:34
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